「犬バカと呼んで」子供たちの旅立ち2(#044)
気ばかりが焦る毎日だった。
子供たちはまだ外には連れ出せないので、
とにかくかあさんを連れて、
「この子の子供なんですけど・・・。」
と宣伝して歩いたが、なかなか新しい家族は見つからなかった。
7月に入り、2頭の子供たちはつぎつぎと引き取られていった。
残ったニッキーとハンス、そしてもう1頭の男の子。
毎日3頭仲良く遊んいる。
このままいくと本当にこの子が手放せなくなる。
早く新しいオーナーさんを見つけなければと思う反面、ハンスで迷った時のように、情が移ってどこにもやりたくなくなってきているのも事実だった。
そんな葛藤が続く中、七夕の前日、飾った笹に、
『早く素敵な家族が出来ますように』と書いた短冊を吊るした。
7月7日、生後2ヶ月と3日。
その日の朝もいつもの公園に行き、人目につくところに車を停めた。
クリスと園内を散歩して戻ってくると、連絡先の書かれた紙が切り取られている。
もしかしたらというはかない期待をもって家に帰るとファックスが入っていた。
やった~!
連絡すると明日見に来るという。
どんな人だろう。
ワクワクすると同時にこの子との別れが急に現実味を帯びて寂しくなった。
複雑である。
そして翌日、約束の時間にその人は現れた。
子供たちは我先にと挨拶に飛んでいく。
クリスも傍までいって愛想を振りまいた。
ところが、みんなひとしきり挨拶が済むと、さっさといつもの場所に戻って寝てしまった。
しかし、行き先の決まっていなかったその子だけがその人のそばから離れようとしない。
手をなめたり、足元によりかかったりと、まるで必死で自分をアピールしているかのようだ。
見ていて涙がこぼれそうになった。
彼にはちゃんとわかっていたのだ。
この家を出て行かなければいけないことを。
7月9日、他の兄弟たちより少し遅れて、彼は新しい家族のもとに旅立っていった。
新しい家族は、幸い家からさほど遠くないところに住んでいるご一家で、やさしいお兄ちゃんの先住犬がいる。
あきらめずに探し続けて本当に良かったと今更ながら思う。
そしてみんな我が家の子供たちより大きく育って元気に暮らしている。
みんな幸せになってくれて、本当に良かった。
旅立つ前の日、クリスはしつこいほどその子と遊んでいた。
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