「犬バカと呼んで」(#017)
後ろ髪を引かれながらもハスキーの仔犬をおいて帰ってきた私だったが、それから1週間後、悪魔の囁きに負けてその子を家に連れて帰ってくることになった。
家の中で初めて飼う仔犬である。
『仔犬とトイレ』の課題がマンディの頃から頭にあったので、仔犬と一緒に大きなサークルも買った。
一辺が90センチ近くある、6面のサークル。
かなり大きい上に、お値段も高かった。
広げてみるとやっぱり大きい。
そこで、とりあえず4面だけ連結した。
前面には人がくぐって入れる入り口まで付いている。
高さもあるので、絶対飛び出したりしないと言うお墨付きだ。
これさえあればリモコンをかじられることもないし、私のポロシャツを食べられることも無いだろう。
サークルが無事組み立て終わってから仔犬を引き取りに言った。
今回は準備万端である。
その子の名前はアルフになった。
当時しゃべる犬のドラマを3チャンネルでやっていたので、その主人公の犬の名前を取ったのである。
相変わらず芸がない。
スコットはアルフを見ても威嚇すること無く、だまって受け入れた。
なんていいやつなんだ。
そしてアルフもそんなスコットのあとをいつも付いて歩く大人しい子だった。
朝目覚めて階下におりると、2頭が仲良く階段の下に寝そべってこちらを見上げている。
いたって平和だ。
アルフはかなり大きかったので、我が家に来てすぐ2度目のワクチンを打ち、その10日後にはスコットと一緒に散歩に出られるようになった。
外に出てもアルフはスコット兄ちゃんから離れることはない。
まるでずっと昔から一緒に暮らしている兄弟のようだ。
ところが、我が家になじんで1ヵ月後のある日、アルフは突然転びだした。
大学病院に連れて行ったが、原因がわからない。
そして、それからのアルフは日に日に神経を侵され、ある日とうとう立てなくなった。
居間に布団やタオルを敷いて、起き上がろうとして倒れても怪我をしないようにしていたが、それでも倒れるたびに大きな音がして鳴き声をあげた。
そして、目が見えなくなり、耳も聞こえなくなり、とうとうフードさえも口にしなくなった。
臭覚も利かなくなったのである。
そしてアルフはたったあっという間に旅立ってしまった。
「仔犬が死ぬ。」なんていうことを当時の私は想像もしていなかった。
ショックだった。
たった2ヶ月ではあったが、スコットとアルフの優しい関係を見られた私は幸せだった。
ありがとう。
つづく。
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