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2008.10.28

「犬バカと呼んで」スコットの悲劇(#014)

おっとりしてどんな犬に対しても問題なかったスコットだったが、晩年ある出来事をきっかけにちょっぴり性格が変ってしまった。

それはいつものメンバーが夜公園で仲良く集まっていた時に起こった。
当時はハスキーが増えだした頃で、散歩に行くと必ず若いハスキーが何頭かいた。
他の犬たちが適当にじゃれあったり、おいかけっこをしている中、スコットは私のまわりでまったり過ごしていたのだが、突然見慣れない女の子が遊びの輪に加わったので、いそいそとチェックに立ち上がった。
歳をとってもそういうことは忘れない。

確かその子もハスキーだった。
っが、その瞬間犬同士のうなり声と共に乱闘騒ぎが始まった。
不覚にも当事犬はみんなノーリードだった。
当事犬は我が家のスコットと、いつもの遊び仲間の若いハスキー。

双方の飼い主は必死で両者を引き離そうとしたがうまく行かないので、足を踏んだり、蹴飛ばしたりしてやっとの思いで引き離した。
引き離してみるとスコットの頭には暗闇でもはっきりとわかるくらい大きな穴(と言っても直径三ミリぐらいだが)があいていた。
噛んだ犬の飼い主さんは恐縮してすぐかかりつけの獣医さんに案内してくれた。

よく見ると歯型は一箇所ではなく、顎の下にも二箇所犬歯の入った穴があった。
スコットは麻酔をかけずに縫合されたが、何も言わずじっとしていたので、
「えらいね。よく頑張った。」
と獣医さんに褒められて帰ってきた。


しかしその後も彼の悲劇は続いた。

夜間公園内を自転車で散歩中、突然ノーリードのオスのハスキーが吠えながら追いかけてきたのだ。
スコットは後ろを振り向き唸っていたが、リードがついていて思い通りに応戦出来ない。
私は無視して走り続けたが、その犬は一向にやめる様子が無い。

飼い主はどこにいるんだ!!

後ろを気にしているスコットを連れていてはスピードが出るはずもなく、私はとりあえず安全のために自転車を降りてその犬を追い払おうとした。
しかし自転車を止めた途端、その犬はスコットに飛びかかって彼の耳に食いついた。
とても止めに入れるような状態ではない。
私がバタバタしていたら、暗闇から飼い主らしき男性が出てきて自分の犬を呼んだ。


激昂した私はスコットから離れて、その飼い主に文句を言いに戻ったが、その男は
「たかが犬の喧嘩だ。そんなに目くじらをたてることはない。」
と返してきた。


私の怒りは頂点に達した。
「喧嘩っていうのは両方が同等の立場でやることで、今のは一方的に襲ってきたんだから喧嘩じゃない!」
と言ってはみたものの、結局その男はスコットの傷すら見ようともせず、その場を立ち去った。

無防備のスコットを後ろから襲うような卑怯な真似をされたのに、飼い主の私が彼を守ってやれなかったことが悔しかった。
彼の耳は先端がちぎれ、血がにじんでいた。


それからのスコットはますます臆病になり、『負け犬の遠吠え』と言われても仕方ないような態度を取るようになった。
近づいてきそうなオス犬には「来るなよ!」と低く唸ったり吠えたりした。


ある日、公園の売店で飲み物を買おうとしてスコットをポールにつないでおいた時も、ノーリードで不用意に近寄ってきたオスの大型犬に彼は「傍に来るなよ。」と唸った。
私は相手の犬に噛みついては大変と急いで戻って彼を押さえていたが、その犬の飼い主は私達の様子を見ても一向に自分の犬を呼び戻そうとしない。

犬も挑発的にどんどん近寄ってくる。
スコットはリードをぴんとひっぱったまま「来るな!こっちへ来るなよ!」と凄い顔で吠え始めた。

ここで喧嘩になったらスコットはまたやられてしまう。
私はスコットを守るつもりで彼と大型犬の間に自分の体を入れた。
その瞬間、恐怖で興奮したスコットはもう何がなんだかわからず、吠えながら私の脇腹に2回噛みついた。

幸い冬で厚着をしていたので打ちみ程度の被害ですんだが、夏だったら思いっきり穴があいていただろう。
それでもその飼い主は何事もなかったかのようにその場を立ち去っていった。

我に返ったスコットは私にすまなそうにしていたが、私は彼を叱れなかった。


彼のオス犬嫌いのトラウマは死ぬまで無くなる事はなかったが、相手が強引に来なければ、自分からしかけることはなかった。
やはり本来はやさしい性格だったのだろう。


たった一度のアクシデントから始まった彼の悲劇。
回避できなかった私の知識の無さがずっと悔やまれた思い出である。


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コメント

パティちゃんの旅立ち...ご冥福をお祈りいたします。  13歳は大往生とも言えますが、あともう少し...とも思ってしまいます...。  

スコット君の物語は、うちのが半分ハスキー(外見はシェパに近いけれど性質的には多分にハスキー)なこともあって、共感する部分がたくさんあります。  起こってしまった事件...。  体の傷は時間が経てば癒えるけれど、心の傷は簡単には癒えませんし、一生残ってしまうものも...。  犬の心の傷のリハビリはプロでも難しく、ある程度は受け入れねばならなくなります。  要は人間の出方1つなんですよね。  時々旦那からそんなに目くじら立てなくても...と言われますが、何か起こってからでは遅い!『事』はすぐに止めなければ(後々)余計に大きくなる!と、喧嘩になることがあります。 

特に犬という動物に対する人間の認識度の違いには、これからも一生悩まされると思います(_ _)。

投稿: ilife320 | 2008.10.29 00:18

★ilife320さん
お悔やみ有難うございます。
私も、まだまだ元気だわ。と思っていただけに、
残念でなりません。

スコットのときは、本当に犬飼い素人だったので
彼に助けられたことは沢山ありましたが、
それでも『噛まれたトラウマ』はどうにもなりませんでした。

>特に犬という動物に対する人間の認識度の違いには、これからも一生悩まされると思います(_ _)。

彼らがしゃべってくれない限り、永遠の課題ですね。

投稿: クリまま | 2008.10.29 05:52

今になってこのシリーズにようやく気づき、一気に読んでしまいました。
でも今でよかったと思います。
スコットくんのところでとまっていたら、感情移入が激しすぎて、その辺の公道をマナーも考えずにノーリードで歩かせている飼い主に、八つ当たりしていたかもしれません(笑)。

ウチの実家のイヌも、僕の目の前でノーリードの大型犬に襲われたことがあります。
平和主義(オクビョウ?)な僕は、普段他人に怒鳴ることなどないのですが、そのときはさすがに人だかりができるくらい激しい口論をしてしまいました。

がぶつかい子の実家の先代も最期は癌でしたが、公園で他の大型犬に襲われたことがきっかけで、一気に体調を崩し、まもなく虹の橋を渡りました。
そのときのカイヌシなどは、逆ギレ状態だったそうです。
こういうカイヌシには、結局何を言ってもムダなんだと思いました。

がぶも誰もいない場所などではノーリードにすることもありますが、必ず制御可能な範囲でというのは心がけています。
もし何かあれば、カイヌシのミスだという覚悟はあります。

「イヌ」は人間がつくりだした動物です。
イヌである以上、人間の助けが必要で、だからこそ人間がしっかり導いてあげなくてはいけないんだと思っています。
自分が常に正しいとは思いません。
でも、正しさを見つけながら、いっしょに成長していくことが、
お互いにとって大切なことであり、幸せにつながると信じています。
良識のあるカイヌシが増え、がぶつかい子の実家の先代やスコットくんが経験したような悲劇が起こらない世の中になることを、願って止みません。

投稿: がぶつかい | 2008.11.13 22:37

>がぶつかいさん
いらっしゃいませ♪

スコットの時に限らず、相手が生き物ということで
日々初心者のつもりでいなければと思い知らされる日々です。

犬と人との快適な暮らしをめざして、頑張ります(笑)!

投稿: クリまま | 2008.11.14 06:30

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