「犬バカと呼んで」スコットの謎(#011)
すっかり室内犬になってしまったスコットだが、昼間は庭でのんびり日向ぼっこを楽しんでいた。
いいご身分だ。
その日もお気に入りの台に寝そべって(なぜ犬舎に入らない!)うとうとしているはずだった。
ところが昼過ぎに電話が鳴った。
出てみると、かかりつけの獣医さんからである。
『あのぅ、スコット君がウチに来てるんですけど。』
「えっ!!」
そんなはずは・・・。
あわてて庭を見ると、
いない!!
いったいどうやって・・・。
とにかくあわてて連れに行った。
我が家から獣医さんまでは200メートルぐらいだろうか。
しかし、駒沢通りという幹線道路が通っている。
平日の昼間とは言え、彼が信号を渡ったとは思えない。
それよりなにより、どうやって庭から逃走したのだろう。
庭には垣根が張り巡らされていて、どうやっても彼が通れる隙間などない。
ミステリーだ。
そしてそれから数日したある日、今度は玄関のチャイムが鳴った。
開けてみると、お向かいのイギリス人の奥様である。
その左側にはスコット君が尻尾を振りながら立っている。
うそだっ!
彼は庭にいたはずだ。
庭から玄関に通じる門は閉まったまま。
おいおい、君はマジシャンか?
イギリス人の奥様は、スコットがお気に入りで、昼間時間があると彼を散歩に連れて行ってくれた。
それを近所のインターナショナルスクールの子供たちが見ていて、道路上で子供たちに捕獲されたスコットはまっすぐイギリス人宅まで連れてきてもらったそうである。
飼い主は私なんだけど・・・・。
しかし、彼はいったいどうやって庭から出て行くのだろう。
謎は深まる。
そしてある日のこと、居間で仕事をしている私の視野の隅っこで何かが動いているのを発見。
顔を上げると、スコットがテラスの真正面の垣根を上っているところだった。
前足はすでに頂点にかかり、後ろ足が垣根の数段目にある。
それはあたかも人間が塀をよじ登っているかのようだった。
「スコット!!!」
振り向いた彼の顔は笑っていた。
謎は解かれた。
それから我が家の塀はブロックとフェンスを重ねて積み上げられ、スコットは2度と不良少年になることはなかったのである。
つづく・・・。
若かりし日のスコットくん
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