「犬バカと呼んで」#009
明日の夜には犬が来る。
まったくもって予想外の展開に我が家は急にあわただしくなった。
そして、ブリーダーさんは当座のフードを用意して、一通りの心構えと一緒に犬を渡してくれた。
『決して味噌汁ごはんなど食べさせるんじゃない』とも言われた。
そんなこと考えてもいなかったが、なんでも同じ頃買いに来た人に、「人間の残りご飯に味噌汁をかければ十分ですよね。」と言われてかなり激怒したらしい。
幸い、以前飼っていたポリーもドッグフードや、鳥肉や野菜のスープを食べていたので、特に戸惑いはなかった。
しかし、それよりなにより、わが家にはリードも犬舎もまだ何も用意していなかった。
マンディの教訓はどこへやらである。
リードなど、一晩くらいなくても問題ないだろうという甘い考えのまま、その晩彼は玄関で寝ることになった。
玄関からよその部屋に行くには、ドアを開けなければならないし、玄関には特に悪戯をするものは何も置いていなかったので、さして気にもせず、「お休み。泣かないで寝るのよ。」と声をかけて私たちは寝室にあがった。
泣き声や騒音で眠りを妨げられることなく一夜は明けた。
夜鳴きを懸念していた私は少々肩すかしを食った感じだった。
しかし、目覚めて寝室のドアを開け、一歩足を踏み出した時、不幸は突然やってきた。
足下がヌルッ。
私はあやうく転倒しそうになって下を見た。
スリッパの下で何かがつぶれて広がっている。
ウウゥ、ウンチだ。
しかも固まっていないのが廊下に3箇所も。
廊下は全部カーペット敷き。
しかも薄いグレー。
なんでこんなところに。
あわててスリッパを脱いだ私は、床に広がっているものを踏まないように洗面所にたどり着き、次に起きた者が踏まないよう、洗剤やらペーパー、雑巾を用意して処理にあたった。
しかし、毛足の長いカーペットの中にしっかり染み込んだ色は全く取れない。
臭いも取れない。
ショック!!
リードも首輪も、犬舎さえも無い家でフリーにしておいたのは私たちだ。
何があっても彼を怒ることは出来ない。
きっと夜中に具合が悪くなって2階の寝室まで私たちを起こしに上ってきたが誰も起きず、間に合わなかったに違いない。
そう思うことにした。
階下に下りていくと、彼は何もなかったかのように、玄関のタタキで尻尾を振っていた。
私はすぐブリーダーに電話した。
普通より値段が高い上に、病気の犬を渡したのなら文句の一つも言わねばならない。
しかしブリーダーは動じる様子もなく答えた。
「あぁ、そうですか。昨日虫下しを飲ませておいたんですよ。念のために。」
そういうことは渡す前に言ってほしかった!
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