「犬バカと呼んで」#006
ポリーが逝って数年後、大学を卒業し就職した私は一匹の犬に出会った。
黒ラブである。
名前はマンディ。
実は彼のことは書きたくなかった。
なぜなら私にとってはひどく苦い経験だったからである。
でも、彼がいたことは事実だし、私にとっては二度と過ちを犯さないためにも自戒の念をこめて書くことにした。
当時黒ラブはまだまだ流行とはほど遠かった。
そしてなぜ黒ラブだったのか私にもわからない。
とにかく目があってしまったのだ。
私ある百貨店のペットフェアで彼と出会った。
まだ3ヵ月の彼は、ただただ黒くてコロコロしていた。
そして、その瞳に吸いつけられた私は、「この子と暮らしたい」と突然に思い出す。
家族に相談したが、当然そんな降ってわいたような話に乗るはずもなく、すぐに結論も出なかった。
しかしフェア期間のみということで待ってもらうことが出来なかい。
私は半ば強引に、「この子は自分で面倒をみるから!」と翌日連れて帰ってきてしまったのである。
やっぱりかなりの愚か者である・・。
彼の名前はすぐ決まった。
大好きなテレビドラマのスパイ、アレックス・マンディからとった。
そしてその晩から彼は私の部屋で寝かせることにした。
「絶対外でなんか飼わない!」
ポリーとの経験がそうさせたのである。
不思議なことに彼はウチにきた最初の晩から夜鳴きひとつせず、一度も粗相をしなかった。
寝る前に私のベッドの横に彼の寝床を作って寝かせておくと、朝にはベッドにあがって私の横で寝息をたてていた。
それがひどくかわいくてたまらなかった。
それを見て、『犬はやっぱり家の中で飼わなければ!』と心の底からそう思ったのだった。
ところが私は会社に行かなくては行けない。
入社したばかりで休暇も取れない。
専業主婦だった母をなんとか説得して、昼間は面倒みてもらうことになったが、あいにく我が家は全てカーペット敷き。
昼間のマンディは夜とはうってかわって、家の中で粗相をし、いたずら全開で母を困らせた。
一週間経たぬうちに母は根をあげた。
「会社をやめるか、犬を返すか。」
両親そろって突きつけてきた。
親に世話になっている身分の私に選べる答えは一つしかなった。
もしこの時点で『犬バカ』になっていたら、「会社やめるわ。」とキッパリ言えたのだろうが、この時はまだその境地には至っていなかった。
今考えれば他の選択肢があったはずだ。
大きな室内用の犬舎を買うとか、もっと勉強して、母の負担を軽減させる方法を考えるとか。
しかし、入社間もない私には、自分自身にゆとりがなく、その時間さえもとれなかった。
もっと準備万端ととのえ、みんなに負担が及ばないような環境作りをしてから計画を実行すべきだったとひどく悔やまれた。
しかし、当時自分で犬を飼おうなど全く思ってもいなかった私をその気にさせてしまったマンディのつぶらな目。
よく人は新しい家族を迎えるとき、「目があって『この子しかいない。』と思った。」と言うが、まさにその時私はそう思ったのである。
以後私は必ず犬を見に行く時は、絶対一人で行かないことにした。
どの子も連れて帰ってきてしまいそうだからだ。
まだ白黒は出てこないけど、
とりあえず、つづく・・・・。
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