「犬バカと呼んで」#002
序章 犬と出会うまで
生き物との出会い
私が生まれた頃、我が家には『チコ』というテリア系の雑種がいたそうである。
残念ながら私に彼女の記憶は全くない。
チコは庭で飼われていたが、母の話によれば、当時幼かった4つ年上の姉が、裏山の崖に近づこうとした時、吠えて母に危険を知らせたそうである。
「雑種だったけど頭は良かったのよ。」と母はよく話してくれた。
これは別に雑種をバカにして言っているのではない。ただ、昔の人は(おっと失礼)血統書付という言葉に弱かったので、「雑種だって!」という意味だったのである。
その後、我が家は父の転勤で東京から名古屋に引越した。
新しい住まいは新築の公団住宅。
当時3歳だった私は、まだ生き物を飼いたいとは言っていなかったらしいが、たとえ言っていたとしても団地暮らしでは何も飼えなかっただろう。
幼いながらも、我が家のベランダに白い伝書鳩が時折遊びに来ていたのを私は覚えている。
朝幼稚園に行く前、ベランダで休憩している彼女(彼)を見かけると、私は母から米粒をもらい、それをベランダから家の中にいざなうように撒いた。
彼女(彼)は全く警戒する様子も無く、首をふりふり米粒を食べながら部屋の中まで入ってきて、満足すると仕事に戻っていった。
捕まえたい衝動に何度もかられたが、幼心にも、『驚かせてしまったらもう2度と来てくれないだろう』と思い、ただ眺めていた。
その頃から生き物に対する好奇心が芽生え始めたのかも知れない。
小学校の2年に進級する前の春休み、私たちは再び父の転勤で東京に戻ってきた。
今度は社宅だった。
父が転勤前の家を売ってしまったので、帰るところがなかったのだ。
(庭付きの一軒家。今いずこ・・・)
冷たい雨の降る日、古い社宅に入ってまず目に入ったものは、変色してささくれだった畳と、柱に残ったいくつもの引掻き傷だった。
前が新築の公団住宅だっただけに、これは結構衝撃的だった。
聞けば前の住人はその小さな2DKの住まいでシェパードを飼っていたらしい。
それならばと、父に『私も犬が飼いたい!』と言ってみたが、『前住んでいた人は、以前から飼っていた犬を連れてきたから黙認されていただけで、新しく飼う事は出来ないよ』と言われた。
がっかりである。
とりあえずあきらめたふりはしてみたものの、私の生き物への執着は心の奥底に小さな火を点けてしまったのである。
・・・つづく(?)
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