正直なイヌ

最高気温17℃にだまされ、上着の下は半そでのポロシャツで出かけた管理人、
仕事から帰る頃には寒気をもよおし、ダッシュで家路に着いた。

自室に上がってドアを開けると、いつもはバタバタと迎えに出るイヌが
机の下に伏せてちぃ～さくなっている。
しかも仲の悪い弟に寄り添うように。
弟はかなりイヤそうな顔をしている。

おかしい。

管理人の動きが止まった。

ドアノブに手をかけたまま回りを見回す。
特に物が散乱しているようには思えない。

ぐるりと上から見回して床に目を落とすと、

うっ！

管理人の足先に水溜りが！

やられた・・。

気温が上がれば水の摂取量も増えるため
トイレが近くなるのもよくわかる。

机の下でちいさくなって、耳を真後ろに倒し、
小さく尻尾の先で床を叩いている彼女の姿を見れば
当然声をあらげることなど出来ない。

ど～っと疲れたが、ソファの上やドッグベッドの上ではないので
後処理は簡単。
トイレシーツで吸水してから、オレンジエックスでよく拭けばいいのだ。

ため息をつきながら、黙々と掃除する管理人を見ていても
彼女は一歩も動こうとしない。

いつもは媚を売りにくるのだが、
それさえもしないので、よっぽど反省しているのだろう。

（犯犬A子）

とりあえずドアのまん前じゃなかったので管理人の足は無事だった。

よかった。よかった。

えっ？なぜ母イヌじゃないとわかるかって？

彼女はガレージの車の中で管理人の帰りを待っているからだ。

すっかりわがままな老女となった彼女は、
部屋においていかれるのがイヤだと文句を言うので仕方ない。

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