犬のリハビリテーション

2021年7月15日 (木)

相手や、相手の犬のきもちを想像する。

今日のプライベートレッスンで、クライアントさんからこんなお話を聞きました。

散歩中、他犬に対して興奮することなくやり過ごせるよう一生懸命愛犬をサポートしていたところ、愛犬が静かにオスワリをして待っていられたので、沢山褒めてあげていたら、真後ろに今やり過ごしたはずの犬が戻ってきたため、結局驚いた愛犬が激吠えして、嫌な経験値が増えてしまう結果となり、とてもがっかりしたというもの。

こういうことは本当によくある話です。

逃げ場が無く、他犬との距離が取れない(歩道が狭かったり)ために、オスワリをさせて飼い主に集中させ、褒めながらオヤツをあげている間にやり過ごそうとしているのに、なぜか相手が立ち止まって自分の犬を寄せて来たり、なかなか立ち去らなかったりという場面です。

そして、こちらの犬が吠えてしまうと、中には「自分の犬は何にもしていないのに、なんで吠えるんだ!しつけが出来ていない犬だ!」と捨て台詞を吐いて行く人もいます。

愛犬が見知らぬ他犬に対して緊張したり、興奮してしまい吠えてしまうことをよくわかっている飼い主さんの多くは、「吠えないでやり過ごして欲しい。」と思っています。
そのためには、どうやって愛犬をサポートしたらいいのか、試行錯誤しながら頑張っている飼主さんは少なくありません。

先日、「吠え」は出なくても、車通りの多い交差点に興奮する子犬のケアの話を書きました👇。
http://chn.air-nifty.com/dance_with_dogs/2021/07/post-75713a.html
少しずつ、「大丈夫」を増やしてあげる方法ですが、他犬に対する攻撃性の無いリアクティブな反応も同じです。

もちろん、何をやってもダメだからとあきらめている飼主さんもいますが、なるべく吠えないで欲しいと願っていることは同じだと思います。

「犬は吠えて当然。」と寛大に見てくれる人もいますが、世の中そういう人ばかりではありませんし、犬を飼っている人も飼っていない人も、同様に嫌だと思う気持ちがあることも事実です。
また、吠える原因が犬にとってストレスになっていることは事実です。

「好きで吠えさせているのではない。」

「だったらなんとかしなさいよ。」

と言ったやりとりが聞こえてきそうですが、吠える犬を持っていない人の中には、吠えてしまう犬と暮らしている飼い主さんの気持ちが全く想像できない人がいます。

先ほどのクライアントさんは、他犬をやり過ごすために、愛犬に集中し、良い行動を褒め、愛犬と会話をしているのですが、その状況を全く把握せずに、自分の犬が行きたがっているからと犬を相手の犬に近づけてくる。

中には、「犬友達を作ろうと思って。」という方もいるかもしれません。
しかし、たとえ悪気がなかったとしても、「いいですか?」や「近づけても大丈夫ですか?」ぐらいの声掛けをしてからというのが基本のマナーです。

犬同士にも相性があります。
相手が嫌だというサインが読めないのであれば、飼い主さんに聞いてみましょう。

犬嫌いな子は社会化不足が原因とは限りません。
飼い主さんが手を抜いたのでも、犬の性格が悪いわけでもありません。
ちょっと、引っ込み思案や警戒心が強かったり、あるいは嫌なトラウマを持っていたり、打ち解けるまでに時間がかかることが多いものです。

ちなみに我が家の見習いは、小さいころから、公園の諸先輩方に相手をしていただき、犬同士の挨拶はわかっているので、子供の頃は一見さんとも仲良く遊んでいました。

202107151

大人のオスになって、オス犬に対する警戒心が強くなりましたが、時間をかければ気にしないでいることは出来ます。

しかし、急に寄って来られれば、こういう顔になります。

20204031_20210715212301

吠える、吠えられるはお互いストレスになるので、出来るだけそういう状況を作らないサポートが出来ればいいですね。

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2020年3月14日 (土)

ドッグトレーニング:気になるものへの反応を減らす

気になるものがあって集中が取れない犬の場合、
気になるものを減らしてあげることが大事。

では、どうやって減らしていくのか。

気になるものに反応する犬を叱るのではなく、
気にならなくしてあげることが飼い主側のサポート。

つまり、気になるものに少しずつ慣らしていくという手法を取ります。

気になるものから距離をとりながら、犬にとっての「大丈夫」を増やしていきます。
気になるものが近すぎては犬の興奮は押さえられないので、
環境設定はとても重要です。

「大丈夫、大丈夫」で犬を無理やり気になるものに近づけるのは禁物。
犬に選択肢を与えながら、犬に納得させることが必要ですね。

状態を悪化させないためにも、焦らず、ステップバイステップでいきましょう。

リアクティブ(反応性が高い)な犬のストレスを下げるためには
BAT
という手法もあります。
ご興味がおありの方は覗いてみてくださいネ。

BAT(Behavior Adjustment Training)
https://grishastewart.com/bat-overview/

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2019年7月22日 (月)

賢い犬ほど難しい

生後9か月くらいからずっと見させていただいているJさん。

当時はご家族全員を噛むという行動がでていました。
理由は、子犬のころ甘噛みがひどくなり、かかりつけの獣医さんに相談されたら、「リードを引っ張って吊り上げてください。」とアドバイスされ、ずっと続けていたからでした。

痛いことをされる前にと、人の手に過剰に反応し、特に自分のテリトリーを侵されそうになると、一歩も引かない子になりました。

カウンセリングに伺ってから、Jさんにとって嫌がることをしない。
自分から近づいてきても、気を許して触り続けていると急変するため、しつこいことをしない。
そういったことを続けてきて、「噛む」という行動が減り、今ではほとんど噛まなくなりましたが、噛むことを忘れたわけではありません。

私は第三者で、今まで一度も嫌なことをしていないので、私を噛むことはまだ一度もありませんが、嫌なことをされそうになると、牙をむく姿は何度か見ています。

嫌なことと言っても、最初はハウスの扉を触ることだけにも過剰に反応していましたが、ハウスは安全な場所であること、ハウスの中に誰も手を入れないことなどがわかってきてからは、「ハウス」と言われれば、素直に出入りできるようになりました。

そのため、今でもJさんがイラっとする環境を作らないように飼い主さんはとても配慮してくれています。

Jさんは、ある時期から散歩が嫌いになったようで、同居犬が散歩に行くときは置いて行かれることに怒りを顕にするものの、散歩に行くかと聞くと、さっさとハウスに入ってしまうようになりました。
しかし、外でしかトイレが出来ないJさんを飼い主さんが心配されていたので、1年ほど前トイレトレーニングをして、現在は室内でもトイレができるようになりました。

今でも気が向くときしか散歩には行かないので、運動不足もあいまって、最近は多少体重が増え気味。
できるだけ散歩に連れていかれるようにしましょうと言ったのですが、リードを見ると豹変してしまうそうで、今は飼い主さんがリードを付けられない状況だそうです。

そこで、今日はリードを使ったハズバンダリートレーニングを行いました。

リードをチラッと見ただけで、クリック/トリーツ。
リードに近寄ったらクリック/トリーツ。
リードを持った手が少し動いても逃げなければクリック/トリーツ。
リードを持った手が首輪を触ったらクリック/トリーツ。
リードを持った手が首輪に触って1秒待てたらクリック/トリーツ。
リードを持った手が首輪に触って2秒待てたらクック/トリーツ。
リードが首輪のフックにかけられたらクリック/トリーツ。
リードが首輪から外せたらクリック/トリーツ。

まずは私がやって飼い主さんに観ていただきました。

最初はちょっと緊張気味だったJさん、トリーツが出ることがわかって、一生懸命頑張っていました。
1回目のセッションが終わってどっと疲れが出たのか水を沢山飲んでハウスに入ってしまいました。

別の犬のトレーニングをしている間しばらくほうっておいて、時間をあけたところで、「Jちゃん、やる?」と聞くと、彼女は自分から来てくれました。

2回目のセッションが終わったJさん。

201907221

心地よい疲れも加わり、久しぶりに、穏やかな表情を見せてくれました。
Jさん、初めて当ブログに登場かもしれません。

このトレーニングは決して急がないこと。
リードを無理に付けようとせず、リードが付いてもすぐ散歩に行こうとしないこと。

賢い犬ほど素早く次を予測し、警戒してしまいます。

まだまだ先は長そうですが、気長にやっていきましょう。

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2019年2月 5日 (火)

ドッグトレーニングとリハビリテーションの違い

犬が外的刺激をストレスなく受け入れられる時期(社会化期)を逃してしまったり、保護されたりして環境が変わったことで、なかなか新しい環境になじめないとき、犬にとってはトレーニングと言うよりもリハビリテーションが必要になる場合があります。

例えば、玄関の外の騒音が怖くて散歩に行けない。
散歩に出られても、車の音や人、他の犬などが怖くて動けなかったり、過剰に反応して吠えてしまう場合は、陽性強化トレーニングで使う報酬(トリーツなど)は全く役に立ちません。
そのような状況にいる犬は何も口にできないからです。
人間も恐怖の極限にいるとき、食事はできませんよね。
つまりそういった犬にはトレーニングではなく、リハビリテーションが必要なのです。

環境に慣れるためにはおそらく多くの時間が必要となり、サポートする人間は忍耐と根気を要求されます。

移動のとき使用したケージから出られない犬もいるかもしれません。
ケージから出られるようになるまでに何日もかかる犬もいるでしょう。

「おやつやごはんを見せれば出てくるはず」というのは、ごくごく普通の子犬や人間に対して恐怖感を持っていない成犬で、本当に怖がりな犬はケージの隅っこから一切動こうとはしません。

保護犬団体に携わる人たちはそういった犬を沢山見ているので対処の方法もわかっていますが、一般の飼い主さんは、散歩に行きたがらない愛犬とどう向き合ったらいいのかわからないこともあるでしょう。

慣らそうとして、無理やり引っ張りだせば逆効果になることもあります。
要は自分から一歩踏み出そうという気持ちにさせることが大事です。

201609161


トレーニング同様リハビリテーションも根気が必要です。
その犬に合った方法を見つけてあげることが大切ですね。

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2018年10月 4日 (木)

噛まない犬になれるのか。

今日たまたま保護犬のボランティアさんと遭遇して話題になった「噛み」の話。

以前「甘噛み」についてでも書いたのですが、犬が本気噛みをするようになってしまった場合、果たして本気噛みはトレーニングで治るのでしょうか。

第一に考えなくてはならないのが、なぜ噛むのかという理由です。

獲物と考えて、噛み殺すほどの力で噛んでくるのか。
自分を守るための防御なのか。

一般的な家庭犬が噛むようになる場合は、嫌なことをされそうになった時の対応ミスが多いものです。
もちろん、嫌なことをされそうになってすぐ噛むわけではありません。
その前に、「やだ!」という意思表示はしています。
顔を背けたり、小さく唸ってみたり、犬たちからのサインはあったはずです。
それを、「これくらいなら大丈夫」とやり続けたことで、最終的に噛むという行動に出ざるをえなくなってしまうことが多いのではないでしょうか。

なぜそれが嫌なのか。
あえて嫌がることをやらなければいけないのか。
嫌なことを楽しいことに変えられないのか。

犬の立場に立った見方をしないと、単純に「人に唸るとはなにごと!」とばかりに力で服従うさせようとすれば、個体によって性格も異なるので、受け入れられる犬もいればそうではない犬もいます。

ご相談をいただく飼い主さんの多くは、古いしつけ本や、古いトレーニング方法を聞きかじった人による、歯向かう犬はマズルをつかんで力で抑える方法や、首輪につないだリードを吊り上げて、犬の首を締めあげる方法をやってみたところ噛まれるようになったというものです。

犬もバカではないので、自分の身が危ういと思えば抵抗しないわけがありません。
なぜなら、問題の多くはやんちゃな子犬時代に端を発していて、飼い主(人間)との信頼関係が出来た犬との間ではほとんど起こらないからです。

もちろん、保護犬のように、様々な経験をしてきた犬の場合は別です。

噛むことで危険回避を学習した犬が噛まないようになるには、単に犬に危険を感じさせないことぐらいしかありません。
つまり「嫌がることを敢えてしない。」ことで、噛むスイッチが入らない期間を延ばしていき、最終的には、噛む手段を選ぶ前に少し考える時間(余裕)が持てる犬になってもらうことでしょう。

問題なのは「嫌がること」が何なのか。
ブラッシングだったり、爪切りだったりという、明らかに嫌がりそうなことは人間にもわかりますが、体に触られるだけでも抵抗を感じる犬はいます。
特に体罰を受けた犬はなおさらです。

「犬は撫でられれば喜ぶはず」という人間の常識は通用しません。

一度失った信頼を取り戻すにはとても時間がかかります。
いつかまた嫌なことをされるのではないかという予測も働いて、噛む経験を持った犬はいつもピリピリしているものです。

だからと言って犬の機嫌を取るのではありません。
敢えて嫌がることをしないことで、嫌なことをフラッシュバックさせないことが大事なのです。


トレーニングによって改善ができるとすれば、その後のことでしょう。
嫌なことが嫌でなくなるようなトレーニングは時間をかければできるものです。
しかし、それも信頼関係が築かれていればこそです。


犬の発するサインを見逃さないようにしましょう。

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2017年5月 4日 (木)

トリーツは万能じゃない

去年、見習いの勉強でも書いたのですが、トリーツがご褒美にならない時があることはみなさんご存知だと思います。

周りの刺激が強いと、犬はトリーツなど口にもしてくれません。
当然ハンドラーの声も耳に入らず、なかなか褒めるタイミングをみつけることができず困ってしまいます。

そこで、そこまで刺激レベルが高くならないうちに声掛けをしたり、アテンションを向けてくれる愛犬を褒めて、こちらを気に掛けることを習慣にしていくのですが、自宅から一歩外に出ただけで、全くハンドラーの声が聴こえなくなってしまう場合、なかなか思い通りに環境に慣らしていくプランはすすみません。

家の中では完璧なのに、外に出ると犬が変わる。
しかし、それでも少しずつ犬に自信をつけさせながら環境慣らしを進めて行くことで、ゆっくりであっても成果はあがってきます。

ロングリードを使って犬に選択肢を与えることも問題解決の補助になります。

201705041


こういう場合は飼い主さんの理解が一番の助けとなるので、焦らず、気長に愛犬に自信を付けてもらうと共に、ちょっとグレードの高いトリーツを用意してみるのもひとつです。
もしかしたら、外の刺激レベルがトリーツの誘惑に負ける瞬間が早まるかもしれませんよ。


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