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2021年8月14日 (土)

動物との接し方:オリンピックで改めて感じたこと

先週閉幕したオリンピック。
結局ちゃんと見たのは見逃し配信された馬術のみでした。
小さいころから馬が大好きで、馬術は昔かじったこともあり、とても楽しみにしていた競技でしたので、日本に輸送されるまでの様子もネット配信で見ていたほどでした。

まさに人馬一体となって馬の歩様の美しさを魅せる「馬場馬術(Dressage」や最大1m60cmの高さがある障害物を飛越する「障害(Jumping)」、自然の中を走る耐久レース「クロスカントリー」など、出場国関係なく応援して最後まで見いってしまった競技でした。

障害においては、馬が障害飛越をためらった場合、日本語では「反抗」と訳されていますが、”Disobedience”と言うペナルティになります。
今回の「障害」や「クロスカントリー」競技でも見られ、その都度やり直しを行ったり、あるいはライダーが落馬してしまったりと、いろいろな場面が見られました。

中には、障害自体をたて続けに落とした時点で、ライダーが棄権するシーンもありました。
馬の不調を感じ取っての判断だったと思います。

どのペアの演技を見ても、ライダーと馬との絆を感じるものばかりでしたが、オリンピックが終わってから、あるライダーとコーチの馬に対する虐待が報じられました。
私はどこかで見落としたのかと確認したところ、その競技は馬術ではなく、「近代五種競技」の中の馬術障害競技だったことを知りました。
私は近代五種競技は見ていませんでした。

ライダーは馬が全く思うように動かないためにパニックになり、コーチは馬を叩くように指示を出していたそうです。

近代五種競技の規定では、ライダーは貸与馬で競技をしなければならず、競技前に馬と接することが出来るのはわずか20分間だとか。

たった20分でお互いの何がわかるのでしょうか。

しかもその時の馬は、前に乗せたライダーからトラウマを受けたらしいとも書かれていました。

ドッグトレーニングに伺っても、私がその場で犬を動かすことはほとんどありません。
初回のカウンセリングで挨拶をし、犬が自分から寄ってきてくれるのを待ち、場合によってはその時犬にとってご褒美となるオヤツをあげてみたりしながら、少しずつお互いを知るという過程を経て、実際レッスンの時、おもちゃで遊んでみたり、ルアーリングなどから、犬との共同作業にはいります。
ましてや、人に対して警戒心が強かったり、なかなか心を開けない犬に対して、初めから能動的に関わることはしません。

何が言いたいかと言えば、近代五種競技の規定に問題があるということです。

動物にも様々な感情があります。
言うことを聞かそうと思えば、そんなことは無視して人間のペースで進めていこうとするでしょうが、現在は動物の福祉についても重要視されるようになり、犬のトレーニングや競技においては明文化されてきています。

犬同様頭のいい馬に対して、そのような配慮がされていないこと自体がおかしいと早くに気づくべきだったのではないでしょうか。

「犬は人を観る」とよく言われます。
犬嫌いな人の傍には寄って行かないとか、行動が読みづらい子供は避けるなど、犬なりにちゃんと考えて行動しています。
その代わり、ちゃんとわかっている人や、わかりやすいキューを出す人の言うことには素直に応えてくれます。

我が家の犬たちも、レッスン時、クライアントさんと一緒に動いてもらう時もあります。
どうすれば伝わるか体感してもらうためでもあります。
その代わり、キューの意味が分からなければ動きませんし、犬は決して叱られることはありません。

同様に、馬も乗り手をよく観ています。
昔は「馬は下手な乗りてをバカにして動かない」なんてことをよく聞きましたが、今になって思えば、下手な乗り手はきちんと馬にキューを伝えられないから馬が動かないのだと思います。

いずれにしても賢い動物たちを相手に何かをしようと思えば、きちんとステップを踏んで、お互いをよく知ることから始めなければうまく行くはずがありません。
しかも競技となればなおさらです。

近代五種競技の規定改正を求める国も出てきているそうです。
もっと早くに気づいていれば、今回のようなことも起こらなかったでしょう。

動物を道具としてではなく、心のある生き物として向き合うという意味で、自戒も兼ねて考えさせられた記事でした。

障害馬術の団体戦のジャンプオフ(優勝決定戦)は圧巻でした。
惜しみなく馬たちをねぎらっているライダーたちの姿は、長年苦楽を共にしている愛馬との集大成を表していたように見えました。

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