ボクは見た!
それは昨日のことだった。
ママが会社から帰ってくると、おばあちゃんがママに言った。
「夕方部屋を覗きに行ったら、床の上にこんなものが落ちていたの。なにかしら。」
手にはちょっと敗れたビニール袋が握られていた。
ビニール袋はウンチ袋とは違って、口のところが閉まるようになっているヤツだ。
ママはそれを見ながら、
「何かしら。部屋におやつは置いていないし、ちょっと記憶にないわ。」
でも、ボクは知っている。
昼間母さんが文句を言って部屋から出してもらってから、ニッキーがひとりで屋上に続く階段を登っていったことを。
でも、ボクは黙っていた。
その代わり、明け方いつもニッキーが陣取っているお気に入りの場所で寝た。
何度もニッキーが傍に来たけど、ボクは知らん顔してどかなかった。
いつもは「どいてよ!」って言うニッキーが今朝は何にも言わなかった。
ボクが寝床を取ってしまったので、ニッキーは明け方からママの傍に言っては、甘ったれた声を出して撫でてもらっていた。
なんにも知らないママは、
「めずらしいわね。どうしたの?ハンスに場所取られちゃったの?」なんてのんきなことを言っていた。
朝の支度が済んで、ママが部屋の掃除を始めた。
ボクたちは邪魔にならないように玄関で待っていたんだけど、その時ママはニッキーのやったことにやっと気づいたんだ。
そうさ。事件は部屋で起きていたんじゃなくて、階段で起きていたんだよ、ママ!
ボクたちが昼間留守番をしている部屋に食べる物は無い。
普段は階段にも食べ物は無い。
でも、先週みんなでママの出張について行ったとき、ママはおばあちゃんたちへのお土産にって、干し芋を買ったんだ。
しかも1キロぎっしり詰まったやつ。
ママは『涼しいところに保管してください。』という但し書きを守って、家の中で一番涼しい階段の手すりに下げておいたんだ。
かあさんやボクは知っていたけど、ニッキーはその日留守番をしていたから、ママが楽しみに買ってきたおやつだってことを知らなかったんだ。
ニッキーが、袋の中からかすかに漂ってくるサツマイモの香りを見逃すはずがない。
そしてニッキーはおばあちゃんと半分ずつにした500グラムもある干し芋をひとりで食べちゃったんだ。
<再現画像>
そして今朝、掃除をしながら、手すりに下げてあった袋が破けて空っぽになっているのをママは見つけ、犯人がニッキーだってわかったんだ。
でもすでに時効は過ぎていた。
結局ママはニッキーには何も言わなかったが、朝のトイレタイムで犯行を確信した。
意地悪なニッキーが一人で全部食べたことも判明した。
ボクは男だからつげ口なんかしなかったよ。
でも、ボクに少しぐらい分けてくれても良かったんじゃないのかなぁ。
母さん?かあさんは何にも知らない。玄関にいたからね。
もし知っていたら、ニッキーはただじゃすまかなっただろうね。
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