巣立ちのとき

★輪になって遊ぼう♪

長かったようで短かった二ヶ月が経って、子供達が新しい家族の待つ家に旅立つ時期になったけど、一人だけまだ行き先の決まらない子がいたの。予約していた人がキャンセルしてきちゃったのよ。
ママは、その子も一緒にウチにおこうかどうしようかすごく悩んでたみたい。
でも本当はハンスだって、最初はウチに残るはずじゃなかったのに、「影」が自分の犬にするんだって言い張って名前までつけちゃったから仕方なく同居が決まったのよね。
もう一頭増えたら、ママだけでなく、私だっててんてこまいになるに決まってるわ。

それからママの、新しい家族探しが始まったの。
その子が一番可愛く写ってる写真を車に貼って走り回ったりもしたわ。
私も一緒についていって、「私の息子なんですけど、どうでしょうか？」ってアピールしてみたんだけど、ボーダーコリーの認知度はまだまだ低かったみたいね。
それに時期が悪かったわ。クリスマスや春休み、それから夏休みの前だったら、多少は可能性もあったと思うんだけど、７月に入ったばかりだったしね

やっと手を挙げてくれた人が我が家にやってきた時、ママと私は内心ドキドキだったの。
もしこの子が気に入ってもらえなかったらどうしようって。
でも、彼は私たちが思っている以上にしっかりしてたのよ。
ハンスやニッキーは挨拶が済むと、さっさと自分のお決まりの場所に行って寝てしまったんだけど、彼は一人だけその人のそばに残って、しっかり自分をアピールして、ちゃんと自分で新しい家族を選んで旅立って行ったわ。
よく出来た子だったわ。ほんとうに。

それに比べて、我が家に残った子供達は、軟弱でどうしようもないわ。
よく言うじゃない、エスカレーター式の私立にいると、下から来た子は軟弱で、外から入ってきた子達は精鋭ぞろいだって。
ウチの場合はこれから外にいく子だけど、やっぱり自分の将来をちゃんとわかっている子供達はしっかりしていたようだわ。
未だに私に叱られると、コテンとひっくり返ってお腹をだすニッキー。
そんなニッキーに「遊ぼう攻撃」をかけて怒られているハンス。あんたたちはいったい何なのよ！
もっとしっかりしなさい！

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